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「足もとの自然からはじめよう」という価値観  ⑤


未来のために何ができるのか、真剣に考えれば考えるほど何ができるのかわからなくなってきます。


「未来のために!将来世代のために!」という言葉のもと、大人が子どもに絶滅危惧種のお話をする、アマゾンでの大火災で森林が減少していることを伝えるなどが思い浮かぶ大人も多いのではないかと思います。

しかし、これら大人が子どもに未来のためにと「良いこと」だとおもっておこなうことが、不適切であれば、子どもは環境に良い活動や、自然を守る活動に参加しなくなるという主張をするアメリカの環境教育の研究者がいます。  

デイヴィド・ソベル(David Sobel)はアメリカの環境教育研究者&実践者です。

ソベルはあまり日本では知られていませんが、子どもの生物学的な発達と身近な場所・自然に根ざした教育(“place-based education”)の重要性を提唱しています。  

この考え方は従来の日本の環境教育ではあまりみられませんが、私達が「ハッと」気付かされる重要なヒントがたくさん散りばめられています。


未来を考えて子どもたちのためになにか行動しないといけない、でも何をしたらいいのか・・・と考える大人に「足もとの自然からはじめよう」という根本的な考え方・価値観を提供するのではないでしょうか。  

ソベルは「早過ぎる抽象化」が大問題であると主張します。

私たちはあまりに早くから、遠い地域の環境問題などの抽象的な事柄を子どもに教えてしまっており、それはかえって自然から子どもを遠のかせてしまっていると言うのです。そこで、大事になることが子どもの発達に即した方法をおこなうことです。  


「足もとの自然からはじめよう」という環境教育のゴールを「身近な自然に関心をもちながら見守ることができる人を育てること」とすると、小さな頃から大人と同じ様に危機感をあおるような情報の伝え方をするのではなく、それぞれの年齢にあった伝え方、大地との付き合い方を伝える方が良いとソベルは断言します。  


そこで、ソベルは子どもにはうまれながらに自然とつながろうとする本能的な欲求が備わっていると主張します。

大雑把にまとめると、まず4歳〜7歳頃は虫や鳥と友達になりたいという「共感」で自然とつながります。

やがて8歳から11歳には行動範囲の拡大にともなって様々な場所を気の合う仲間と「探検」することで、自然とつながります。

そして、12歳から15歳で身近な社会とつながりながら自分のできる範囲でその場所を良くする「社会活動」をおこない、子どもの自然への欲求は広がっていくのです。

それでは、ソベルの主張に沿って考えをさらに深めていきましょう。