流れる水と大地の約束 My流域マップを作り豪雨災害に備える

①川はどこにある?川を知ってみよう!

携帯電話の地図で自分の家の周りにはどんな川が流れているのかを探してみましょう!普段から川でジョギングや野球など川を利用しているひとは簡単に見つかるのではないでしょうか。

一方、川はどこにあるかわからないという人もいると思います。地図を見ると、意外と近くに川が流れていたことに気がつきビックリするかも知れませんね。

さて、自分の家や仕事場、学校など生活場所の近くに川を見つけたら、今度はその川の源流と河口をたどってみましょう。

流域研究をおこなう慶應義塾大学名誉教授の岸由二先生は「流れ始めるところが源流。別の川に合流する地点や海に流れ出していくところが河口。このとき、忘れてほしくないのが、川は高いところから低いところに流れるということ。地図を見るときも、土地が高い場所が源流で、低いところが河口になる。」(流域地図の作り方より)と言っています。

つまり、見つけた近所の川をたどっていき、山地とぶつかった場合、そこはたいてい源流。その反対側に行くと海へと出て河口となります。海へ行く途中にたいてい大きな川と合流しています。これはあなたがたどっている川が支流であったということです。  

もし、余裕があれば、あなたの近所の川とつながっている川すべての源流を見つけてみて、川をなぞってみましょう。そうすると河口は一つですが、源流はたくさんあり、まるで葉っぱの葉脈のような模様になります。それら本流と支流を全部合わせて水系と言います。

② 流域地図をつくってみよう!

水系がわかれば流域を理解するまであと少し!

岸さんによると流域とは「水系を中心にして広がる雨の集まる大地の範囲のこと」だそうです。もう少しかみ砕いて話すと「大地に降った雨が地表を流れて河口に集まる大地の範囲」となるのではないでしょうか。大地に降った雨は必ず高いところから低いところへと流れます。

源流の山に降った雨は支流に流れ、支流から本流へ流れ、本流から河口へと水が流れる。その途中にほかの源流に降った雨がほかの支流へと流れ込み、その支流が本流へと流れ込む。つまり、降った雨がある場所に集まる範囲のことを流域というのです。

上の図からわかるように河川のスタート地点(源流)がちがっていても、ゴール地点(支流)は同じになります。

なお、岸さんも「流域とは、水系に雨水が集まる大地の範囲となるが、雨水(あるいは雪解け水)が水系に流れ込むルートには、地表に直接降り注ぐもののほかに、分水界をこえて他の流域から地下水として移動してくる場合もあるし、深い地下から噴き上がる水もある。もちろん、下水道など各種の人為的なシステムを介して川に流れ込む場合もある。」とされているが、わかりやすくそれらの場合を今回は取り扱わないものとします。

図1(石川 流域マップ)

③ 谷を見つけてみよう!

実際に自分の生活している場所はどのような流域に属しているのだろうか?

そんな疑問を持った人もいるのではないでしょうか。それでは、自分はどこの流域に属しているのか調べてみましょう!そこで用意するのが、等高線が記載されている地図。等高線とは中学校の社会で多くの人が学んだ内容です。等高線がわかる地図を用意したら、まずは川を探しましょう。その川をたどり、山地のほうへ行くと川に向かって口を開く等高線が現れ始めます。

その脇には口を閉じる等高線があるはずです。口を開く等高線が谷、口を閉じる等高線が尾根となります。まっすぐ平らだと思っていた地面でも、降った雨は左右に分かれて流れる場所があります。それを分水界と言います。その分水界が尾根となり、雨水は低い場所(低地)へと集まり、またそこからどこかへ流れていく。

 そのため、雨が降る大地であれば、分水界を境にどこでも、この流域という単位で分割することができます。そして、流域同士は重なることなく、一つひとつがジグソーパズルのピースのごとく接する。それをつなげていくと、やがて日本列島という形になります。「流域」という単位で区分けしても、見事に日本地図をつくることができるのです。

同様の等高線を使用して、流域の研究をおこなう太子町立中学校社会科学部の中学生が石川流域の流域地図をGoogleのマイマップで作成しました。石川流域にお住まいの方は、自分がどの流域に属しているのかわかるのではないでしょうか。

④流域マップの解説

青色の線を一次河川、オレンジ色の線を二次河川、赤色の線を三次河川、紫色の線を四次河川とします。
一次河川は、源流から流れる川のことを表し、(図2)
その一次河川同士が合流した河川を二次河川といいます。(図3)
三次河川、四次河川も、これと同じようになります。
そして、一次河川と、二次河川をまとめた流域を、源流域(赤)、

三次河川の流域(黄色のエリア)と源流域(赤色のエリア)をあわせた範囲が支流域となっています。

図2(一次河川、二次河川=赤色のエリア=源流域)

図3(三次河川=黄色のエリア)

源流域に雨が降っていると、支流域に雨が降っていなくても、川は増水します。

なので、アウトドアや、川遊び、釣りなどの前に、お天気と一緒に参考にしてください。

⑤ 地図を片手に川へ出かけよう!

実際に川へ行くといろいろな発見が生まれてきます。できれば川に沿って歩いてみることをお勧めします。

例えば、下流に向かうにつれて川幅はどんどん大きくなること。川の周りの様子も大きく変わっていること。源流付近では川のすぐ近くまで山や森が迫っていたりすること。中流付近では周りが平坦になり、畑や住宅地が広がることなど、様々な発見があります。

⑥実際に川に入る時も流域マップを忘れずに!

川に入るときの注意点として上流を見ましょう!と言われたことはないでしょうか?

それも流域地図を知っている人なら理由がわかるはず。今から入ろうとしている川を流れる水は上流から流れてきているからです。今入ろうとしている場所で雨が降っていなくても、上流の流域が広く、そこに雨が降っていた場合、増水することがあるからです。

この映像は2016年の9月石川流域の支流にある飛鳥川流域で撮影されたものです。

この日、飛鳥川の源流地域に位置する太子町や二上山で非常に激しい雨が短時間に振りました。

飛鳥川の下流域ではほとんど雨が降っていませんでした。

動画の撮影場所は下流域にある羽曳野市立駒ヶ谷小学校の裏で撮影しました。雨は殆ど降っています。


天候は何も変わらず、水位が上昇し、身の危険を感じる高さまで上昇しました。

もし、上流の流域に雨が降っているか気にせず川遊びをしていたら、逃げるまもなく流されてしまう様子がよく分かると思います。

最低限石川流域で川遊びをする際は、流域マップを確認し、上流域に雨が降っていないかチェックした上で楽しい川遊びの時間を過ごしてもらえたら幸いです。自分が入ろうとしている川の上流にはどのような規模の流域が広がっているのか事前に調べて、そこの天気を調べておけば完璧となります。まずは、流域地図をつくって、自分の入る川の源流を調べてみましょう。