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生息域外保全ネットワーク

カワバタモロコの生息域外保全について

 生物の多様性に関する条約(1993年、日本も加盟)では、締約国に対して、自然の生息地における保全を補完するために、生息域外保全のための措置をとるように定めています。そこで上記条約に乗っ取り、淡水魚(ホトケドジョウ)の保全の取り組みを行っている、神奈川県鶴見川流域の事例を参考に石川流域におけるカワバタモロコの生息域外保全を行っています。 石川流域では独自に「石川流域カワバタモロコ保全指針」と「生息域外保全導入基準」を作成し、それに沿って生息域外保全拠点ネットワークを構築しています。(順次HPでも公開予定)

流域に着目し、域外保全を行う

 カワバタモロコの生息域外保全にあたってはカワバタモロコの生息が確認されている流域内、もしくはそれが困難な場合は当該流域と同じ水系に属する隣接した流域において実施しています。つまり、石川水系に含まれる梅川流域、もしくは飛鳥川流域で生息域外保全に適切な場所を事前調査で選定して生息域外保全拠点としています。また、生息域外保全拠点が位置する流域のほぼ全てのため池で魚類相を事前に調査し、新たにカワバタモロコの生息が確認されていない流域でのみ生息域外保全拠点を設置しています。現段階では石川水系に属する飛鳥川流域と梅川流域が該当します。上記の場合、同じ水系(石川水系)内でのカワバタモロコの移動となるため、遺伝子レベルで極端な撹乱はなく、保全が可能だと考えています。これは、生物多様性条約における域外保全の原則をカワバタモロコの特性を踏まえ「域外保全の措置は、当該流域、それが困難な場合は当該流域と同じ水系に属する隣接した流域において実施する事が望ましい」と読み替え、適用しているためです。

 また、カワバタモロコの増殖のみでなく、水生昆虫等様々な生き物がにぎわう水辺を創出し、ビオトープネットワークの形成を目指して活動を行っています。そして、生息域外保全拠点はカワバタモロコや水生生物の保護だけでなく、地域への発信、環境学習での活用等も目的に行っています。

梅川・飛鳥川流域内に複数の生息域外保全拠点を組み合わせ、個体群絶滅を防ぐ

 カワバタモロコは現在、石川流域の1カ所のため池にのみ生息しています。1カ所のみではゲリラ豪雨による土砂災害等によって絶滅する危険性が高いです。そこで、複数の場所でカワバタモロコを飼育することで絶滅の危険性を低く抑えることが出来ます。

 例えば、保全拠点における絶滅の可能性が仮に10年に1度とすると、流域内に保全拠点が1カ所の場合の絶滅確率は10年に1度ですが、5カ所の場合の絶滅確率は10万年に1度となります。

生息域保全拠点の分類

・野外自然型生息域外保全拠点(管理されているため池等 / 現在無し)

・野外人工型生息域外保全拠点(人工的に作られた学校ビオトープ池等 / 現在複数存在)

・水槽型生息域外保全(教育機関や公共施設での水槽飼育 / 現在複数存在)

 水槽型生息域外保全拠点として協力いただく方々は水槽型生息域外保全拠点のルール(上記リンク参照)を守ることに同意いただいた上で、比較的公共性の高い場合(お寺、小学校、待合室 等)での飼育をおこなっていただいています。また、水槽型生息域外保全拠点も梅川流域・飛鳥川流域としています。なお、各生息域外保全拠点には事務局団体が存在し、事務局団体が生息域外保全拠点を定期的に見回っています。

市民による継続的なモニタリング調査

 野外人工・自然型生息域外保全拠点は当会のメンバーが主体となって、地域の人々、子ども等と協力して定期的なモニタリングを実施しています。詳しくは市民調査のページをご覧下さい。

環境教育プログラムとの連携

 カワバタモロコの域外保全拠点を継続的で安定的に実施するには生息域外保全拠点の方々の理解が必要です。そのために2010年2月から飛鳥川流域、梅川流域の小学校で協力を得て,児童が校内でカワバタモロコの飼育・観察に取り組み,市民団体のメンバーが授業でカワバタモロコの生態や保全の取り組みを紹介する環境教育プログラムを実施しています。このプログラムを通して,児童にはふるさとの自然を慈しむことで豊かな感受性を育み,また将来を考える力を身につけてもらうとともに,保護者等の校区住民への生息域外保全に関する啓発を行なっています。なお,水槽の管理は各小学校の委員会活動の一環として行っています。