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①「外来種は本当に悪者か?」の巻末解説の解説を巻末解説者にしてもらった

巻末解説は以下の出版社のwebサイトから引用しました。


巻末解説

 現代生態学の核心的なテーマを扱う不思議な本が登場した、というと、意外に思われるかもしれない。扱われているのは、自然回復論。外来種をどう理解し、評価するか、未来の自然保護をどのようなビジョンで考えるか、そんな話題ではないか。そのどこが現代生態学の基礎テーマにからんでいるというのだろう。 

 現代生態学の基礎テーマというと、まっさきに、ドーキンスの利己的遺伝子論や、やたらに複雑な数理生態学のことを連想する読者がいるかもしれない。それはそれで、正しいのだが、自然回復、自然保護などを扱う生態学のいわば本道における基礎テーマは、すこし焦点が違う。きわめて重要な領域なのだが、とくに日本の生態学の領域ではなかなか話題にするのも難しく、わかりやすい専門書もほとんどないのが実情だ。そんな、わかりにくい世界について、「外来種をどう評価するか」という現代保全生態学の論争的な話題を切り口に、さらりと紹介してしまう、というか、さらりと紹介してしまった著者の手腕に拍手をおくりたい。

  生態学という分野は、生物の種の生存・繁殖と、環境条件との関係を扱う、ダーウィン以来の生物学の一分野である。と同時に、生態系、生物群集などという概念を使用して、地域の自然の動態についても議論をする分野でもある。種の論議と、生態系や生物群集の論議は、かならずしもわかりやすくつながっているわけではないので、 2つの領域はしばしばまったく別物のように扱われることもあったと思う。

  しかし、20世紀半ば以降、実はこの2つの分野をどのように統合的に理解するかという課題をめぐって、生態学の前線に大きな論争あるいは転換があり、古い生態学、とくに古い生態系生態学、生物群集生態学になじんできた日本の読者には、「意外」というほかないような革命的な変化が、すでに起こってしまっているのである。その転換を紹介するのにもっともよい切り口が、「外来種問題」、これに関連する「自然保護の問題」といっていいのである。 古い生態学の中心概念と思われていた生物群集、あるいは生物群集を重視する生態系は、しばしば、超個体などともよばれる有機体論ふうの全体論哲学につらぬかれていた。いわく、生物群集・生態系は、進化の産物として厳密・厳格な種の相互関係、共進化にささえられており、個々の種は、歴史的に形成されたその厳格な相互関係の結節点(ニッチなどともよばれた)に、みごとに適応する存在として位置付けられていた。攪乱されることなく、保持された「手付かずの生物群集・生態系」は、それ自体が、微妙なバランスのもとに相互適応する代替不能な種によって構成され、「遷移」という歴史法則にそって「極相」とよばれる完成形にいたる、歴史法則的な存在とみなされていたのである。 





巻末解説者の解説

岸先生’s 解説 ①  

20世紀半ば以降の生態学の歴史には様々な転換があります。20世紀前半の生態学には群集論的な思想が主流であった。その当時は、それぞれの種に焦点をあてられていたのではなく、種があつまった集団=全体。様々な種が集まったものを中心として生物を扱っていたんだ。基本的には群集というのは時代が経つにつれて超個体となるという考え方。それぞれの個体が、種が密接に関わり続けると、ある一つの種のような存在=超個体になるという考え方。 それが、少しずつ違うんじゃないかという考えが出てきて、次には生態系という概念が生まれるんだ。群集だけではなく、群集と関わる物理的な環境なども含めて考えようという考え方。生きものの種の関係だけだとうまくいかないけど、物質の循環やエネルギーの流れも含めて考えるやりかた。みんなも、食物連鎖や生態系ピラミッドとか聞いたことがあるだろ?それも全部、その考え方なんだ。その中で生態系というものは様々な生きものの絶妙なバランスで保たれているという考えも出てくる。 



岸先生’s 解説 ②

 そういう理解からすると、本来の生態系から取り出した種は、本来の生態系の種じゃない=それをもとに戻すと生態系のバランスが崩れてしまうから、もう無視していいという考え方も出てきたんだ。 例えば、少し前までは外来種=本来の生態系にいない種(ウシガエルのオタマジャクシやアメリカザリガニ)を食べたカワセミはもう日本のカワセミではない!ということを平然という人に出会ったことがある。 つまり、極端な言い方をすると日本の正しい生態系の中にいるカワセミだけど、よそから入ってきたものを食べてるカワセミは生態系から取り除かれたものを食べているから滅んでも良いという極端な考え方なんだ。そんな考え方になるのも、今まで言ってきた、生態系などの理解からすれば予想される発想だと僕は思う。 


巻末解説者