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タイリクバラタナゴ

タイリクバラタナゴは、1942年にソウギョやハクレンなどの種苗に混じって日本に持ち込まれました。日本の固有種であるニッポンバラタナゴに比べて成長が早く、産卵期間が長く、産卵数が多いことが明らかになっています。また、ニッポンバラタナゴと容易に交雑するため、本種の生息域拡大につれて交雑種が増加し、純粋なニッポンバラタナゴが減少しました。そのため、生態系被害防止外来種リストにおいて「重点対策外来種」に指定されています。


タイリクバラタナゴの外見


1.生息域 

タイリクバラタナゴは、中国の揚子江や台湾を原産とする魚ですが、現在では北海道から沖縄まで全国に渡って分布しています。また、関西では琵琶湖や淀川水系、関東では霞ケ浦や北浦が代表的な生息域です。 多くの個体は、用水路の緩流域・ため池・湖・沼などの流れの止水域に生息しています。


2.食性 

稚魚期は主にワ、ムシなどの動物性プランクトンを食べます。成長にともなって底層に移動し、主に付着藻類や小さな水生動物を食べるようになります。


3.形態 

体は側扁していて、体高が高いのが特徴的です。成魚でも体長は、5cm~10cmほどの小型魚です。体色は主に銀色ですが、繁殖期の婚姻色は大変美しいです。オスは、成魚になるにつれて背ビレの黒い斑が消え、目が赤みを帯びてきます。また、産卵期にはエラブタの後ろがピンク色になり、体色は黒っぽくなります。一方、メスは成魚になっても背ビレの黒い斑はそのまま残り、目の色も変わりません。


4.繁殖生態 

産卵期は3~9月で、オスがイシガイ科の二枚貝を中心になわばりをつくり、メスはなわばりの貝の出水管へ1度に数個の卵を産みます。卵は電球のような形をしているのが特徴です。

タイリクバラタナゴの生態

産卵期は、3月から8月で、盛んなときは5月である。メスは、産卵管を貝の出水管から挿入し、西洋梨型の卵を産みこむます。産卵に利用する貝は、主にカラスガイ族貝やイシガイ、マツカサガイです。寿命は、長くて3年です。生息場所は、湖沼や河川、ため池、農業水路などの水が止まっているところです。


タイリクバラタナゴの仲間

タイリクバラタナゴは、国外外来種ですが、仲間に日本固有の魚がいます。それは、ニッポンバラタナゴRhodeus ocellatus kurumeusといいます。ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは、とても似ていますが、腹鰭の白い帯の有無で判断することができます。ニッポンバラタナゴは、九州や瀬戸内、大阪、奈良に生息します。ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは、生態も似ていることからお互いに敵(競合関係)となっています。そのため、ニッポンバラタナゴは減少し、保全の対象となっており、タイリクバラタナゴは、侵略的な外来種としいて指定されています。また、ニッポンバラタナゴと交雑しているという報告もあります。


Ⅴ参考文献

参考にした文献です.もっと知りたい人や興味のある人は読んでみてはどうでしょうか.

大阪市立自然史博物館.2020.知るからはじめる外来生物

~未来へつなぐ地域の自然~.大阪市立自然史博物館.大阪

細谷和海.2019.増補改訂 日本の淡水魚.山と渓谷社.東京

斉藤憲治.2018.くらべてわかる淡水魚.山と渓谷社.東京

北村淳・内山りゅう.2020.日本のタナゴ 生態・保全・文化と図鑑.山と渓谷社.東京